空手で、形の稽古中や形の話題になると「えんぴ」という言葉を、時折耳にするかと思います。
始めての方にとって「えんぴ」と言われても「一体何だろう?」と思われる方も多いかもしれません。
ここでは、空手における「えんぴ」とは一体どのようなものなのか、またその意味についても解説していきます。
「えんぴ」とは一体何か?
空手における「えんぴ」とは「松濤館十五の形」の一つであり、全空連主催の試合での形競技において「カンクウショウ(観空小)」と並ぶ、松濤館流における第二指定形であります。
序盤は、他の形では見られない、いきなりしゃがんだ状態での払い受けから始まります。
次に伸び上がるように立ち上がり、下段払いと突きと手刀のコンビネーションによる、スピーディーな攻防を繰り広げます。
中盤では序盤同様、スピーディーな攻防の展開に加えて、タメを入れた、緩急のメリハリがある動作へと移行します。
後半はゆったりとした掬い受けの動きが加わり、最後に力強く大きく飛び上がりながら1回転して、形は締めくくられます。
一連の流れを通して、ダイナミックかつキレのある挙動が、見る者に大きなインパクトを与えます。
「えんぴ」に込められた意味とは?
「えんぴ」とは漢字で「燕飛」、全空連ではカタカナで「エンピ」と表記します。
もともとは泊手の形で、伝えた人の名前から「ワンシュウ(汪輯、腕秀など)」と呼ばれていました。
その経緯については諸説がありますが、首里手の使い手である船越義珍がワンシュウの他、いくつかの泊手の形をマスターして、弟子たちに伝えました。
松濤館流と並ぶ空手四大流派の一つ、和道流の創始者大塚博紀もその一人で、和道流では現在でも「ワンシュウ」という名で伝えられています。
松濤館流では、従来の沖縄風の名称を、例えば「ナイファンチ」を「鉄騎」というように、標準的な日本語の漢字熟語に置き換えて呼ぶようになりました。
ワンシュウも同様に、その一連の伸縮のあるスピーディーな動きが、まるで「燕(ツバメ)が飛ぶような」動きに似ているため「燕飛」と呼ばれるようになりました。
まとめ
この「えんぴ」は「松濤館十五の形」の中でも、非常に難易度の高いものの一つであります。
しかし、一度ご覧になると、あたかも燕が飛ぶかのごとくキレのある動作を、ぜひ真似てみたいと思われる方は、きっと多いはずです。
空手の形の持つ、キレとダイナミックさをふんだんに盛り込んだ、魅力ある形の一つでもありますので、チャンスのある方はぜひ、マスターしてみて下さい。