空手の型では、同じ名前なのに、動きの違うものがあります。
例えば、空手でも最も美しい型と言われる「ローハイ」が挙げられます。
なぜ同じ「ローハイ」なのに、動きの違う型が存在するのでしょうか?
ここではその理由について、動きの具体的な相違点とともに、解説していきます。
同じローハイでも、どう動きが違うの?
ローハイと呼ばれる型には、2種類の型があります。
1つはマツムラ(松村)ローハイと、もう1つは(糸洲)ローハイ初段~三段です。
ここでは便宜上、マツムラローハイ は「松村版」、ローハイ初段~三段は「糸洲版」と表現いたします。
両者は、ローハイの特徴である、片足立ちで構える「鷺足立ち」がある点では共通しますが、以下の点において相違があります。
挙動
松村版・糸洲版とでは、挙動ごとの技の内容やその流れに、相違があります。
型の数
松村版が単独の型であるのに対し、糸洲版は初段から三段までの、3つの型に分かれています。
移動する方向
松村版が演武者から見て左右・斜め前・正面方向に移動するのに対して、松村版に最も動きの近い糸洲版の初段でも、演武者から見て左方向に移動する点において、相違があります。
違う動きの型が存在するのはなぜ?
ローハイはもともと、泊手の古伝の型と言われていますが、現在の空手の型として残されているローハイの型は、先に挙げたマツムラローハイとローハイ初段~三段の2種類です。
その1つめのマツムラローハイは「首里手の祖」と言われる、松村宗棍から伝わったと言われるものです。
しかし「首里手の祖」が泊手をマスターしたという記録は残っておらず、実際には「泊手中興の祖」と言われる松茂良(まつもら)興作ではないかと言われております。
後の世代に伝承されていく過程で「松村」と「松茂良」がごっちゃになってしまったのでは、と言われています。
もう1つのローハイ初段~三段は、同じく首里手使いで、松村に師事した経験があり、かつ泊手や那覇手もマスターしていた糸洲安恒から伝わったものです。
おそらく個人の解釈などが加わって、同じ名前でも全く違う内容の型になってしまったのではと思われます。
まとめ
同じ空手の型でも、流派によって解釈や挙動が異なることはよくありますが、型の大きな流れは、さほど変わりありません。
しかしローハイでは、それを伝えた人物によって、その動き方や流れが大きく異なり、同じ糸東流の型ではありますが、大きな違いが見られます。
どちらのローハイも、空手においては動きの大変美しい型であり、いずれの型も、その美しさに甲乙をつけがたいものです。