現在、集中力の欠けた子供たちや、人の言うことを聞けない子供たち、そして自分自身をコントロールできない子供たちが、ますます増えてきています。
手軽に娯楽が手に入り、あらゆるものがネット上で完結できる今、特に子供たちにとっては、自我のコントロールが非常に難しくなってきております。
子供のうちから、辛いことや苦しいことから逃げ出さずに、自我を抑える訓練を積み重ねていくことは、芯のある大人として成長するためにも、やはり重要なのではないでしょうか。
そのための手段として、空手が子供たちの成長に役立つ、3つの理由についてご紹介してゆきます。
空手は「型」と「基本」の地道な反復で上達する
空手の稽古は、流派によって細かな部分は異なるものの、多くの流派や団体では、以下のメニューを毎回繰り返します。
・基本:立った状態または移動しながらの突きや蹴りの動作を、1本ずつあるいは連続で行う
・型:上述の動作を一連の流れをもって組み合わせた動作、様々なパターンがある
・約束組手:2人1組になって一方が攻撃側、もう1方がそれを受け技で受けて、突きや蹴りで返す。パターンが決まっている
・自由組手:2人がお互い自由に突きや蹴りを出し合い、攻防する
ここでは、約束組手以降に関しては、より上の段階になりますので、説明を省きます。
基本の稽古では、みんな並んで一斉に同じ動作を、1本ずつあるいは連続にて行います。
大きな声で気合を出しながら、正しい姿勢で、正しい動きで技を出すようにします。
腰を落とした状態での騎馬立ちや、片足に重心がかかった状態での前屈立ちや後屈立ちでの移動は、慣れないと大人でも維持できないほど辛く、忍耐力を必要とします。
しかし、ここで基本を反復することにより、その姿勢や動きを体に沁み込ませることによって、足腰が鍛えられるとともに、型においてもキレのある動作が身につくようになります。
型の稽古では、様々なパターンの型の手順について、指導者の方や先輩方から教わったことを、一つひとつしっかりと覚えなければなりません。
ここでは、人の話をしっかりと聞くことができる力と、型に取り組む集中力がなければ、何一つ覚えることができません。
「型」と「基本」が子供の成長に役立つ3つの理由
礼儀が身につく
これは空手以外での武道全般に言えることですが、道場に来た以上は、節目節目での挨拶や礼法を欠かすことは決してありません。
もしも挨拶のできない子供がいたら、指導者の方は、毅然とした態度で、その子がきちんと挨拶ができるようになるまで、徹底的に指導することでしょう。
集中力が養われる
特に基本の稽古では、全員一斉に並んで、みんなで同じ技を一緒に行います。
時には型の稽古でも、1つの型をみんな一斉に行うことがあります。
否が応でも、みんなと同じ動きをしなければならない緊張感は、空手の稽古ならではのものです。
たとえ子供といえども、好き勝手なことが許されない空気が、そこにあります。
忍耐力が養われる
今の子供たちの中には「待つ」「耐える」「(気持ちを)抑える」ことができない子たちが、非常に増えています。
基本の稽古を一通り行うだけでも、短いところでも15分、長いところでは30分以上、時間を費やすところもあるでしょう。
初めて経験する子供たちにとって、基本の稽古を行うだけでも、苦痛を感じることでしょう。
その時間の間、指示された通りのことを正しく行い続けることによって、忍耐力を養うことができるのです。
まとめ
子供のうちから何でも与えられ、特別な存在だと思い込んでしまうような環境下に育ってしまうと、自我が肥大化してしまいます。
すると自己中心的な人間に育ってしまい、自分の欲望が満たされなければ、他者を犠牲にしてでも犯罪を犯す恐れもあります。
いろいろと便利になった一方で、人との関わりが希薄になり、礼儀や集中力、そして忍耐力を養う機会は少なくなっています。
こんな時代だからこそ、子供達には空手を通して、人間的に大きく成長してもらいたいものです。